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第10話 マングローブ
汽水域に発達する森林
 マングローブは熱帯、亜熱帯の大きな川の河口や入江の汽水域(淡水と海水が混ざりあう場所)に見られる森林である。泥土が堆積し干潮時には広大な干潟となるような、温帯ではアシが茂るような環境に発達する。
 鹿児島県の喜入にはメヒルギ1種からなるマングローブがある。これがマングローブの北限であるが、小規模で、移植だとする説がある。南西諸島を屋久島、奄美大島、沖縄島と南下するにつれ規模が増し、構成する樹種も増えていくが、本格的な発達は八重山諸島以南である。西表島ではオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギモドキ、ヒルギダマシ、マヤプシキの6種がマングローブを構成している。
 マングローブを作っている樹種は、ヒルギ科を主体として、ハマザクロ科、センダン科などさまざまであるが、総称してヒルギの仲間と呼ぶ。その意味では、ボルネオには約50種類のヒルギがある。しかし、個々の場所では数種類が優占するのみである。
 最もふつうに見られるのがフタバナヒルギ。ヤエヤマヒルギと同属で,4弁の薄黄色の花をつけ、長いタコの足のような支柱根が特徴である。次に多いのがベニガクヒルギ。八重山諸島にあるオヒルギと同属で、赤い萼を持つ花が特徴である。支柱根は短く幹の下部に集中していたり、こぶや板根を形成しながら地面を四方に広がっている。
気根が、地下茎から竹の子のように突き出しているのはホソバマヤプシキ。樹高30・に達し、塩分濃度の高いところで生育する。ホウガンヒルギはザボンに似た球形の大きな果実をつける木で、マングローブの奥まった場所に生育する。ダケカンバのような樹皮をし、十分に成長した木にはいくつもの穴ができ、樹幹は空洞になっている。

動植物の重要なエサ場
 マングローブは海の生物にとって、たいへん重要な場所だ。ここでは、上流からの有機物が多量のプランクトンを発生させ、それらがカニ、エビ、貝類、さらには外洋性のカツオやマグロの稚魚の大切なエサとなっている。また、干潮時には、甲殻類や貝、ゴカイなど多くの無脊椎動物、小魚を漁る鳥類の格好のエサ場となる。シギ・チドリといった渡り鳥もここをエサ場とし、休息もしている。ただ、広大なマングローブに離散するせいか、日本の干潟のような大群は観察できない。
 マングローブへのアプローチは船なしでは不可能で、そのため観光にしても一般の人が夜訪れることはない。夜のマングローブ。なんと言っても圧巻はホタルである。1本の木の上から下まで、何十、何百ものホタルがびっしりたかり、水に浸る部分には特に多い。この木がどのようにして選ばれるのか私には分からない。周辺と同じ樹種だし、特別に高いとか大きな木というわけでもない。ただ、共通するのは川や水路にある木で、奥まったところでは見られない。周辺からはパチッ、パチッと何かをはじくような音が聞こえるが、これはテッポウエビだ。それ以外は、音もなく、マングローブの夜はとても静かだ。ライトを点けると,コウモリが行き来しているのが分かる。たぶんホオヒゲコウモリの仲間だろう。水際でダイダイ色に反射するのはワニの眼。静止し、眼の部分が出ているだけだから、一見、水に座ったカエルのようである。たまにスーッと移動するか、音もなく潜ってしまうが、驚いた瞬間はバシャーンと音をたて、潜る反動で体の大部分が現れる。腹側のうろこが黄色に光り、それは巨大な魚のように見える。50センチほどの子ワニがうようよいるということは、母ワニもいるはずなのだが、1996年にカリマンタンで老婆を食べてしまったような5・を超す個体は、まず目撃されることがない。

第11話 ボルネオの気候

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