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第8話 ジュゴン
インド洋から沖縄の海に
ジュゴンは、沖縄では古くから「ザンノイオ」と呼ばれている海に棲む動物である。
体つきは紡錘形で、体長3メートルに成長する。
「人魚」のイメージとはほど遠く、ブタの顔を前後に押しつぶして耳をなくしたような形で、愛きょうのある顔をしている。ブタでは鼻の先端に左右の鼻孔があるが、ジュゴンでは頭部の上面に開いているので、体を水面からほとんど空中に出すことなく、呼吸をすることができる。
八重山諸島の新城島は上地・下地の2つの島からなっている。昔,首里王朝の時代には、ジュゴンを捕る島として知られ、下地島だけでも400人の島民を数えた歴史がある。しかし、交通の便が極端に悪く、今はこれといった産業もないために、下地島は1960年頃、廃村になった。住人がいた頃は、香の煙が絶えることのなかったジュゴンを祭る御嶽も、今はオオハマボウやアダン、クロツグの生い茂る海岸林にうずもれてしまい、御嶽へ通ずる道も定かではなくなってしまった。
ジュゴンはインド洋から太平洋海域の暖海にだけ分布し、日本近海では、以前は奄美大島から南で見ることができた。比較的最近になって、名護市の辺野古崎沖に終年、棲息しているのが確認されている。
私はサバ州野生生物局に3年間勤務したことがあるが、その間、沖縄と関係があったことといえば、職員1名を沖縄記念公園水族館(現ちゅら海水族館)にあずかっていただき、3ヶ月間、クジラ類の調査方法と分類の勉強でお世話になったことがある。現在、彼はサバ州の海棲哺乳類保護の部門で活躍している。

沖縄との共通種も多数
哺乳動物のなかには水中で生活するものもある。クジラの仲間とジュゴンである。
ボルネオ島周辺のスルー海、マカッサル海、ジャワ海、南シナ海からは27種のクジラとジュゴンが確認されている。北緯27度以南の沖縄の海で確認された数とほぼ同数だ。海には彼らを隔離させる要因が陸地より少ないから、共通する種類も多い。
ボルネオ島最大のマハカム川では、イラワジイルカを観察することができる。カワゴンドウとも呼ばれ、シャチなどに近い動物である。頭は丸く吻も普通見るイルカのような突き出た形ではない。全長2~2.5・,背中から側面は青みを帯びた灰色だが、野外ではほとんど黒に近い色に見える。背びれは背中の中央より少し後ろにあるが、小さくて丸く、乳頭のような形だ。腹面は白っぽい色だが、自然状態で腹面を観察できる機会はまずない。
イラワジイルカは、マハカム川に棲む淡水性のイルカだと思っている人が結構多い。しかし、このイルカはインドからインドシナ半島、ボルネオ島、オーストラリア北部にかけて分布する海水性の種類である。湾内や河口付近に棲むが、ほかのイルカと違って、河口から200キロメートルもさかのぼった淡水域にも進入するのである。 
ボルネオ島では、マハカム川のほか、サバ州のキナバタンガン川河口、東カリマンタンのスブク川河口、ブルネイからサラワク州にかけて各所で確認されている。
スマヤン湖の漁師はイルカを捕らない。夕方、沈み行く太陽に輝きながら、潜水とジャンプを繰り返すイルカ。
お互い豊かな湖の幸を分かち合っているのだ。舟から投網をうつ漁師と湖面に見え隠れするイルカが、素晴らしいハーモニーをかもし出していた。 
第9話 奥地と結ぶ水の道

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