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禁止の酒がある不思議 
 14世紀後半~16世紀、琉球は東南アジアで大活躍した交易国家であった。そんな中で、泡盛(蒸留酒)の製法技術は、15世紀の後半にシャムから伝えられたと言われている。
 東南アジアの伝統的な酒は3つに大別できる。麹を使った酒とヤシ酒、およびそれらから造る蒸留酒である。ただ、イスラム教は禁酒が建前であり、イスラム教徒が多いカリマンタン、ブルネイでは造り酒屋はないし、自家製の酒も表向きはない。
 ムルット族やドゥスン族はウルチ米を原料として、餅麹で酒を作っている。甕は泡盛と同じものを使っている。すべて中国製である。飲むときは管を使って甕から直接吸うが、1つの管を全員で使う。A型肝炎が異常に多いのは、このせいだと言われる。
管は節と節の間が1・もある極細の竹を使うが、これは標高800メートルを超す山地に自生している。節を1つ残し、約80センチの長さに切るが、節には穴をあけず、その代わり、そのすぐ上に長さ2センチ程の溝を開ける。こうすると、酒を吸い込んでも米粒が穴に詰まることがない。酒がなくなると水を足して、また飲む。アルコール分はビールより低い。クニャ族は原料に赤いモチ米を使うので、見ためはお汁粉のようだ。
イバン族はモチ米と餅麹を使って発酵させ、布で漉して酒にする。そして、この酒から蒸留酒も造る。サバにはムンタコという蒸留酒の工場が1つだけある。これも泡盛に似ているが、アルコール分は20度を超えない。
ヤシ酒は地方では普通だ。ココヤシの花序が開く前に、花序の大花苞を縛って開かないようにし、先端を叩きつぶしておく。すると、1~2週間後に、先端から液が出始める。この液が2日で酒に変わる。アルコール度はせいぜい1~数パーセントだ。村人は結構酔っているのに、私は1升飲んでも、まったく酔いがこなかった。
闘鶏も隠れた場所で
山地ではサトウヤシかサゴヤシを使う。サトウヤシはココヤシよりも糖分が高く、発酵させるとアルコール度が少し高い酒になる。サトウキビから砂糖が採られる前は、砂糖はもっぱらこのヤシから採集した。ヤシの樹液は放っておいても自然発酵するが、早く進むためメヒルギの皮を入れる。樹皮がタンニンを含んでおり、発酵を遅らせることが出来る。
サバ・サラワク・カリマンタンでは店でビールが飲めるし、スーパーにはウィスキーなども売っている。基本的にアルコールは日本と同様に入手できるということである。
ブルネイでは、どこへ行ってもアルコールは売っていない。酒を造ることも禁止されている。厳しいイスラム国家なのである。しかし,道端や海岸にはビールの空き缶が捨てられている。1つには週末になると国境を越えてサラワクのリンバンやミリ、あるいはラブアン島へ飲みに行き、帰りにアルコールを買って帰るのである。イスラム教徒以外は、酒の持ち込みが出来るし、家で飲むことは容認されている。また、中華レストランで「スペシャルドリンク」と小声で言うと,グラスに入ったビールが出る。その時、テーブルにはまったく関係のないジュースの空き缶が一緒に置かれる。        
もっと凄いことは、月に1度くらい、厳しく禁止されているのだが、どこかで闘鶏が行われる。場所は毎回変わり、簡単には分からない森の中だが、必ず車で行ける人家の庭先である。焼きソバや焼き鳥の店が出るし、ワゴン車はビール販売店である。
その他、サラワクから移住したイバン族には伝統的な酒造りがあり、行事用と言う事で、政府も黙認している。ガワイと呼ばれる収穫祭(例年5月末)にロングハウスの各家のものを順に飲みながら一回りし、最後は全家の酒を混ぜて全員で飲み干す。
第17話
第16話 酒
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