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| 世界最大の花 世界最大の花であるが、大きさもさることながら、その奇妙さに驚かされる。寄生植物だから栄養を作る葉がないし、それを運ぶ茎もない。根が菌糸状になっていて宿主の幹深くに食い込み養分を吸収しているのである。花は、中央部が深いナベのような構造で、中に雄しべや雌しべのある柱状体が座っている。周囲には5枚の花弁が付いており、幼い子供が描く典型的な花にそっくりだが、赤と白の異様な斑紋がある。ラフレシアの仲間はタイ南部からマレーシア半島、スマトラ、ボルネオなどアジア熱帯から14種(人により多少異なる)が知られ,大きさは種類によって違うが、大きなものでは直径が1・を超す。 私が初めて出合ったのは、スコールが来そうな、しかも、夕方の暗いジャングルであった。人知れず、それでいて堂々と開花している姿に、私は何か神々しいものを感じた。ところが,明るい太陽の下で見ると、巨大な中国製の、安物の置物に見えたりするのである。 奇妙さもさることながら、ラフレシアはめったに見ることができない花だ。1つには宿主であるブドウカズラ属の1種が特に少ないからだろう。今のところ、他の木への寄生は知られていない。親指の爪くらいのつぼみが、成長して開花するのに9ヶ月を要するのだが、それでいて、開花は4日だけである。しかも期間の後半は、キノコと同じように、花弁がただれて腐り始める。咲き終わった花は,色と雰囲気がダンボール箱の燃えかすに良く似ている。開花は季節を問わないが、雨季である11月~2月までが比較的多い。 つぼみは焦げ茶色の皮に包まれているが、開花間近になると、皮が押しやられて花弁がのぞき、巨大なピンク色のキャベツのようになる。しかし、それまでに死んでしまうつぼみもあるし、そこまできて開花できないことも多い。 強い悪臭説に疑問 マレーシア半島の東にあるティオマン島では標高50・の低地に咲くと聞くが,他はすべて標高600~1,400・のジャングルの中で、私の経験では、結構、急斜面に咲いている。 1818年、当時スマトラ島のベンクーレンで総督を務めていたイギリスのラッフルズ卿と、博物学者のアーノルド博士がスマトラ内陸部を探検調査した時のことである。現地雇いの人夫が血相を変えて知らせたのが、偶然に見つけた巨大花だったのである。花は2人によって詳細に調べられたが、アーノルド博士は、不幸にも探検半ばにして熱病で死亡した。しかし、博士のメモやスケッチがラッフルズによってイギリスに送られ、植物学者ロバート・ブラウンによる学会発表で、初めて世に出たのである。学名(ラテン語)は発見者2人の栄誉をたたえ、ラフレシア・アーノルディと付けられた。1821年のことである。 ラフレシアの花に強い臭いがあることは有名である。発見者の2人も、発見した花を処理している間、激しい死肉臭に悩まされたと書いている。しかし、実際のところはどうなのだろうか。というのも、私はボルネオで開花直前から完全に腐ったものまで、さまざまな段階の花に出合っているが、ほとんどにおいを感じていない。これは私の鼻が悪いからではなく、多くの人たちも同様な体験をしている。マレーシア半島でも同じである。強い臭いを感じたという報告はすべてスマトラからのもので、これがあたかもラフレシアには激しい腐敗臭があるという誤った概念を作ってしまったのではないだろうか。そのスマトラで開花に遭遇した人たちでさえ、臭いを感じ取っていない人も多い。 ラフレシアの臭いは、種類の違いによるものか、個体差によるものなのかもしれないが,本当に強臭があるとするならば、私はぜひ、そんな個体に出合ってみたいものだと思っている。 第 30 話 両生類 |
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| 第29話 ラフレシア | ||||



