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熱帯・亜熱帯に共通
 「自分は今、旅をしているのだ」と感じるのは、まず、目に映る景色からだと思う。土地の気候風土にあった植物が生育し、家の造りや生活様式も、それに合わせて違っているからだ。その意味で、沖縄からボルネオに来ると、ほとんど違和感がない。さすがフタバガキを中心とした熱帯多雨林は独特だが、海岸林、マングローブ、大きな川沿いの川岸林。それにヘゴ・リュウビンタイ・リュウノウシダの茂る山地林は沖縄と良く似ている。
さらに、町で見る花や街路樹はすべて共通である。もっとも、これは沖縄とボルネオに限らず、世界の熱帯・亜熱帯地方すべてに共通する。もともと世界に広く共通して分布していたものではないが、見栄えがし気候に合うので,世界中で植栽されたのである。
沖縄の町や村の中にある樹木や花は、ほとんどすべて、外国からのものだと考えて良い。県花のデイゴもインド原産のマメ科植物である。モモタマナノキ(クワデサー)もボルネオの町で普通に見られるが、ここには台風がないから、巨大な木に成長する。カエンボク、オウコチョウ、ホウオウボク、モクセンナ、キダチアサガオ(エンジェルトランペット)などもなじみの花である。
町の中心街にある広場や、特にブルネイでは街路樹のほとんどにオキナワキョウチクトウ(ミフクラギ)を使っている。もっとも沖縄の川岸や湿地林に見られる野生種ではなく、植栽用に改良された品種である。1年中、白い花を咲かせ、それがようやく涼しくなる夕暮れの空に良く映えるのだ。リンゴによく似た丸い緑色の果実をつけるが、食用にはならない。樹液に毒があり、沖縄では昔、魚取りに使ったと聞くが、そんな木だから害虫にも侵されにくく、街路樹として管理しやすいのだろう。

街にプラスティックの造花が
 ココヤシの向こうに広がる珊瑚礁の海,真っ赤な夕日をバックにした町並みとココヤシのシルエット。ポスターやカレンダーには欠かせない組み合わせである。私たちにも熱帯を感じさせてくれる木である。ところが、種子が落下すると思わぬ事故になることから敬遠されている。コタキナバルでは今年の始め、中心街のココヤシをプラスチック製の「造花」に替えた。それぞれの木の全体、幹、葉、種子に至るまで1つの色で出来ており、緑、黄、青の原色がある。おまけに夜は色つきの電球で縁取られるのである。まるでクリスマスツリーだ。日本人の感覚からは、これならない方がましだと思うのだが、地元民には結構評判が良いのである。そう言えば、こちらでは公園や個人の庭に、セメント、陶器、プラスチックで作ったとてつもなく大きな花や動物を置くのがとても好きだ。
こちらの家は庭が広く、たくさんの花が植えられている。イカダカズラ(ブーゲンビリア)、オウゴンカズラ(アラマンダ)、サンダンカ、ピジョンベリーなど、沖縄ではなじみの花ばかりだ。草本ではマツバボタン、ニチニチソウ、マリーゴールドなど。それに必ず1本か2本、マンゴーやランブタン、スターフルーツなど果樹が植えられている。ランをはじめ、タニワタリなどの着生植物を育てている家も多い。ますます沖縄の家と似てくる。
街路樹や庭木は、1年中、何らかの木が花をつけているが、ほぼ一斉に咲きそろうのは4~5月と10月頃である。前者は北東からの季節風が南西に変わり、乾季が始まる頃である。後者は再び季節風が変わり、雨季に入った頃である。
熱帯の空にはデイゴやホウオウボク、イエローシャワーやなど原色の花が良く似合う。青空に映えるデイゴを見るたびに、私は沖縄で過ごした青春時代を思い出している。

第40話 川岸林

第39話 花と街路樹