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沖縄へは台湾から
 スイギュウは,約5,000年前からインドで家畜化され,東南アジアを中心に広い地域で飼われている。一方,野生のスイギュウも,インド,アッサム,タイなどに分布している。
沖縄へは1933年に台湾から石垣島へ,メス2頭,オス1頭が移入されたのが始まりだと言われている。粗食にたえ,その上特別な管理もいらないことから,耕作やサトウキビの運搬,観光用に利用されている。
スイギュウは頭胴長2.5~3・,肩高1.5~1.8・,体重500~800・・の大きながっしりした体格の動物である。大きなひづめを持ち,オス,メスともにツノがある。ツノは特に根もとが重厚で,後方内側にカーブしている。体は灰色や黒色だが,普段,体中に泥をぬりたくっているから,灰褐色か赤茶色の泥の色をしている。泥はヒルやダニ,アブなどから皮膚を守るためのもので,鼻だけをだして全体とっぷり水に浸かっていることが多い。
ボルネオ島のスイギュウはすべて家畜で,農耕用または肉用として全島的に飼育されている。ボルネオ島ではウシよりスイギュウを飼育するほうが一般的であるが,これはウシに比べて病気に強く,高温多雨の気候風土に合っているからなのだろう。
 クラヤン高原へ行ったことがある。標高900・。カリマンタンの最北端に位置し,国境を北に越えればサバ州,西に越えればサラワク州である。戦時中を含め,ここまで入った日本人は本当に少ないと思う。
 私が訪ねたのは7年も前だが,泊まった宿の息子が,むかし西表島で世話になった知人の息子さんにそっくりなのだ。色白で面長,背丈も体つきも物腰まで,日本人に良く似た人がたくさんいる。逆に,私がダヤクと間違えられるのも不思議なことではないのだ。

結納も葬式も
 クラヤン高原では古くからスイギュウを放牧している。周囲の山麓ではもちろん,村落の周辺,町へ出た人の屋敷跡でも飼育している。一部は耕作にも使うが,多くは肉用に国境を越えてサラワクやブルネイに売られて行く。高値で安定した現金収入になるのだ。
 クラヤン高原や,国境を挟んだサバ南部にはルンダヤッ族が住んでいるが,彼らは結納の際,男側から花嫁の家へスイギュウを渡すのだそうだ。嫁は返礼として,それ相当の家具を持参する。世話になった村長のイテブさんは13頭渡したと言う。長女は嫁入りの際,9頭もらったと聞いた。
 サバ州の人口は280万,一番大勢を占めるのがカダザン・ドゥスン族で約50万人,全体の約18・に達する。このカダザン・ドゥスンの葬式にはスイギュウの肉がつきものである。四つ足は腿と肩がつけたままのものをたき火で十分に焼く。残りは内蔵も含めてナベで煮る。葬儀は約1週間続くが,その間,参列者はスイギュウ汁をふるまわれ,帰りがけには,吊してある肉を適当にそいで,バナナの葉に包んで持ち帰る。
 彼らはその日のために普段からスイギュウを養っているが,コタキナバル近郊は,スイギュウを飼えるような広場が少なくなり,それより盗まれることが多いので,最近ではパサール(市場)で買って間に合わすのが普通だと聞いた。
ブルネイやサバのクダイ(大衆食堂)で出しているのは,多くがスイギュウの肉だ。「何の肉」と聞くと,必ず「サピ(牛)」と答える。ところが,「クラバウ(水牛)か」と尋ねなおすと,たいてい「そうだ」と返事がくる。牛肉のほうが高級だからといって,ごまかしているのではなさそうだ。常食している肉に,区別するほどの必要はないということなのだろう。
第45 家畜

第44話 
スイギュウ