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消える熱帯雨林
 ボルネオといえば,アジアではもっとも開発が遅れ,もっとも広い熱帯多雨林が残る場所と言われる。しかし,それは大幅に減少し,手つかずの熱帯多雨林はなくなっている。
ボルネオ島における森林限界は標高3,500・。熱帯という気候から,3,500・以下は,かつてほとんどの土地が森林に覆われていた。その70・が熱帯多雨林であった。この森林には多くの有用樹種があり,古くから利用されてきたのだが,戦後まもなくして重機を使った大規模伐採が行われるようになる。サバ州を例にとると,1960年代から伐採が急速に増大し,州政府総収入に占める木材の割合が71・に達した年もある。日本は熱帯林破壊の張本人だとの悪評があるが,開発を推進したのは発展途上国政府であり,仮に日本が南洋材の輸入をしなければ伐採が止まったわけではなく,その分,中国,台湾,韓国などに送られていただろう。ボルネオからの原木を1番買ったのは金額的にはアメリカである。量的には日本が1番多い。つまり安い木を大量に買ったということと,日本の急成長に対する羨望が相まって批判の対象となっているのであろう。森林資源の減少が進み,木材関連収入は87年をピークに下降,94年にはサバ州政府総収入の23・にまで低下した。
この現実を背景に,植林による森林再生が試みられている。植林は在来のフタバガキが理想なのだが,問題が数多くある。まず,種子を集めるのが至難なのである。フタバガキの仲間は毎年結実するわけではないし,結実してもリスやムササビ,鳥。落下するとシカやイノシシに食べられてしまう。また,フタバガキは休眠せず,種子は1週間で死んでしまう。だからスギ,ヒノキのように種子を集めておいて一斉に苗を作ることが出来ない。さらに,恐ろしいほど成長が遅く,災害や政策を含め,植林地が後々まで確保される保障はまったくない。実際,フタバガキ造林は研究の段階に留まっている。

困難な森林再生
 経済効率を考えた結果が早生樹と呼ばれる外来種の導入である。なかでもアカシアマンギウムは植林の8割を占めている。成長が早く,10年で製紙原料になるということである。しかし,これが実際にパルプとして利用されることはほとんどない。葉に樹脂を含み,乾季に頻繁に火災に遭い,収穫に至らないのである。また,言われたほど成長が早くない。チークも同様である。5年で収穫でき,工場が買い取るというふれこみであるが,20年たっても収穫出来る太さに達しない。儲けたのは種苗会社だけである。
植林による森林再生が期待できない中で,皆伐後,アブラヤシ農園への転換が進んでいる。この状態はしばらく続くだろう。しかし,ここにきてアブラヤシ産業にも陰りが出始めている。隣接国で大規模栽培が始まったことと,国際価格の下落である。また,最初に植えた木が20年たって収量が減り,植え替えの時期に来ている。農業・林業の常識からして,2代目の収量は減少するだろう。あるいは今までなかったような病虫害を被る心配もある。私が危惧するのは,20年後,2代目が寿命を迎える時である。単一作物の栽培には限界があるから,これまでの土地は放棄され,新たな森林皆伐による農園開発に進むだろう。
マンモスがいた日本の昔を学んでもピンとこないのと同様,高さ60・を超す森林が果てしなく広がっていたと聞いても,だれも理解できない時代になってしまうのかも知れない。

第48 エコツーリズム

第47 森林開発