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安間 繁樹
1話 東京青春時代 土屋實幸さんと共に
1.はじめに
祖国復帰(1972)の年である。「うりずん」開店の前夜、僕は一生懸命になってカウンターにかんなをかけた。今、その分厚い琉球松は「いちゃりばちょーでー」の泡盛をたっぷり含んで、昔を醸し出してくれている。それは、僕にとって力強い明日への応援歌だ。沖縄では一方的に土屋さんの世話になっているが、昔、東京に、二人だけのかけがえのない青春があった。
大隈講堂は早稲田大学のシンボルである。路面電車全盛の、もう40年も昔のことだ、講堂の前を通って狭い大隈横丁をぬけると広い通りに出た。都電が通っていて、そこを「早稲田車庫前」と呼んでいた。向側に二階建ての木造アパートがあって、店子(たなこ)は皆学生だったが、昼も夜もいつ訪ねても、どこかの部屋に数人が集まって酒宴が繰り広げられていた。酒はつねに剣菱の一升瓶、お互いに「通」を自認していた。
僕は、「こんな連中とは違うんだ」などと自分に言い聞かせながらも,同級生が出入りしているので、いつしか、ちょくちょく酒盛りに加わるようになっていた。
住人の一人に学部が違う先輩がいた。渡口健次郎という沖縄からの猛者(もさ)である。ある日、「君に紹介したいのだが」と彼が口を開いた。なんでも高校からの友人が山に興味を持っているのだが、まったく経験がなく誰か一緒に行ける人を探していると言うのである。僕は普段から山歩きをしていて、そんなことも時折話題にしていたから、渡口氏は友人と僕を結びつけようと考えたのだろう。
約束の日、バイトを済ませると、僕はアパートへ直行した