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10話 土屋くんとの出会い。学生アパートの底力
安間 繁樹
土屋くんと初めて会ったのは、お互い、東京で学生生活を送っているときだった。その日の彼を、僕は良く覚えている。色白で目鼻立ちが整っていて、同席したアパートの連中と比べて、場違いなくらいあか抜けしていた。体がキッとしまり、口数はそんなに多くないが、人の話には真剣に耳を傾ける人だった。
場所は、早稲田大学近くのアパート。土屋くんは、そこの住人ではなかったが、昼間、もし誰か一人でもいるとしたら、それはたいてい彼だった。当時の学生アパートは、たいてい部屋が開け放たれていて、留守中でも、知り合いなら勝手に上がりこんでも構わないところだった。
どういうわけか、このアパートにはとりわけ猛者が集まっていて、昼も夜もいつ訪ねても、どこかの部屋に数人が集まって酒宴が繰り広げられていた。ネコを捕まえてきて食べたとか、腹がへったからと金魚を食べた者もあると聞いた。僕は現場を見ていないが、多分、本当だろう。あそこへ行くと、それがうなずける。
店子(たなこ)も「遊びましょうがく(商学)部」や「華の阿呆がく(法学)部」の連中で、早稲田でも、政経や理工から遠く離れた、落ちこぼれの学生集団であった。もっとも、大学時代の勉強なんて言うのは、何も教室の中だけではないし、むしろアパートでの人間付き合いや、夜を徹してぶつけあった主義主張が、人生にプラスしているような気がする。うりずんで、30年ぶりに偶然会った当時の仲間が、会社や店を経営していたり、大会社の九州支社長になって、沖縄へ来たりしているのを見ると、改めて、学生アパートの潜在的パワーを感ずる。土屋くんは、若い頃、いち早くそれに気づいていた人だと思う。 
11話 留守中の火事,救ったのは天性の勝負強さ?