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11話 留守中の火事,救ったのは天性の勝負強さ?
安間 繁樹
土屋くんと会ってじきに、火事で焼き出された話を聞いた。それによって、二人は会う前から近くにいたことを知る。僕のバイト先の運送屋が小石川にあって、仕事が終わると、よく近くの銭湯へ行ったものである。ある土曜の夜、その銭湯が火事になった。土屋くんは当時、牛乳店でバイトをしており、その寮なのか、近くのアパートに住んでいた。アパートは火もとの銭湯の隣にあって、出火後、まともに火を食らってしまったのである。
その夜、土屋くんは、山田くん(奥様恵子さんの兄)のアパートに泊まっており、翌朝のテレビニュースで火事を知った。一方、アパートの留守部屋には、沖縄の友人がたまたま泊まっていた。刻々と迫る火に、友人は何を持ち出そうかとただうろたえていたのだそうだ(持ち物なんてほとんど無かったはずなのに)。唯一の財産とも言えるステレオプレイヤー。しかし、当時のステレオはずば抜けて大きく、一人で持ち出せるような代物ではなかった。友人はタオルや衣類に水を含ませてステレオを死守しようとがんばったが、最後には熱さに絶えきれず、外階段を駆け下りたそうだ。
やがて鎮火。水浸しになったものの、何と土屋くんの部屋だけが残っていた。そして、庭にたたずむ友人の前には、ステレオがあった。本人も気づかなかったみたいだが、火事場の何とかである。焦げ跡が残るステレオは、土屋くんが沖縄へ戻った後、1年ほど私があずかって、使わせてもらった。
それにしても、その後の人生や、うりずんの隆盛を見る時、きわどい所で生き残れるのは、才能と並々ならぬ努力があってのことだが、留守宅が火事でも自分の部屋だけ無傷で残るなどということは、持って生まれた勝負強さであるように感じられてならない。
12話 きつい仕事も、さらりと楽しく。バイトの明け暮れ。