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安間 繁樹
 
15話 たった1度の冬山登山(その1)。何が本音?の登山願望。
 二人だけの冬山は、確か1度しかない。「沖縄へ帰ったら、雪の山へ登る機会などないだろうから」。土屋くんからそう言われて、「いいよ、行こうよ」と約束はしたものの、なかなか決心がつかなかった。奥多摩あたりでは物足りないし、かといって,南アルプスや八ヶ岳は自信がなかった。なにせ、人一人の命を預かり、お互いに無事生還できることが絶対の条件だ。
この山行きに関して、土屋くんからリクエストが出た。「無事下山したら女の子に会いたい」と言うのだ「よ、出ましたね。色男。このあたりが本音かな?」。話はこうだ。以前、高校時代の恩師が、1年間の内地研修で木曽の学校に滞在していた。ある時、休暇を使ってその教師を訪ねようと、友人と共に上野発の信越本線に乗った。その列車で、たまたま向かい合ったのが彼女だったというのだ。なんでも、純情、素朴な地方の娘らしい子で、しかも、ここが不思議な出会いなのだが、偶然にも同姓の「土屋」だったそうだ。そこで、「何かの縁です。またお会いしましょう」ということになったらしい。その時の土屋くんには、「めずらしく」下心はなかったみたい?。浮いた話は初めてだから、僕も、寒い時期なのに、「一肌ぬがなくては」と意気込んだ。なんでも、その娘は小諸にいるという。
 下山して小諸へ向かうことが出来る山。雪も氷もたっぷり堪能でき、それでいて比較的安全な冬山・・・。幾つかの場所を考えてみたが、最終的に、僕は奥秩父の金峰(きんぷ)山に決めた。山梨と長野の県境にある標高2,599メートルの峰である。あそこなら、これまで何度か登っているから、責任を持って案内できる。それに、利用可能な無人小屋がある。距離はあるが、信州側に下山すれば、1日で小海線から小諸に出ることも可能だろう。
16話 たった1度の冬山登山(その2)。入山前に遭難?