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安間 繁樹 18話  たった1度の冬山登山(その4)。二人だけの山小屋生活。
 山小屋生活が始まった。今回の滞在は動物や地質の調査といった目的がないし、「出来れば金峰山の頂上に立ちたい」程度の気持ちで来たから、実に気楽だった。朝もゆっくり起きてお茶をすすり、陽がたっぷりあがったら、ひなたぼっこをしたり雪遊びに興じていれば、それで時間が過ぎていった。いつも東京でしっかり働いていたから,今回は二人にとってのご褒美旅行なのだ。なんて、良く言うよ。
 朝、外へ出たら、土屋くんが棒を持って、便所の入口あたりの床をしきりに叩いている。「何やってんの」と尋ねると、「戸が閉まらんさ」と答える。雪が張り付いて、10センチばかり開いたまま、戸が閉まらないと言うのだ。「誰が見るというの。僕だってそんな趣味ないよ」。土屋くんは、まだまだ修行の身だな。都会のことなんか忘れちまえ。ここでは、自由気ままに、人のことなんか気にしなくてもいいんだよ。身も心も休めて、力が出たら、また東京へ戻ろうよ。
夕食は明るいうちに準備した。そうでないと、雑煮を炊くにも、餅と靴下を間違えて入れたりしかねないから。まさか、そんなことは無いだろうが・・・。食事も、すでに薄暗くなっていたが、少しけむたい部屋で、いつもより早めにすませた。酒はと言うと、これがあまり進まないのだなあ。空気が冷たすぎて、どんなに飲んでも酔わないのだ。それに、寝ころんだ姿勢では飲みにくいし、だからと言ってシュラフから出るには勇気がいる。夜長はろうそくを灯して、シュラフザック(寝袋)に入ったまま、いつまでもおしゃべりを続けていた。今となっては何の話だったのか、まったく記憶がないのだが、大学や仕事のこと、昔のいなかでの話、そして、とりわけ、二人の夢を語り合っていたのだろう。

19話 周囲に4人の遺体が。