magazine20.html
|
|||||||||
| たった1度の冬山登山(その6)。土屋くん初の雪山に登頂。 | |||||||||
|
「朝日にきらめく新雪踏んで・・・」。なんて、歌の通りにはいかないのだ。金峰山を目指した日、無風の樹林帯をぬけると、そこはガスに包まれていて、全く展望がきかなかった。風はそんなに強くないが、細かな雪が頬に当たり、首筋からウインドヤッケに入ってくる。
狭い稜線を、ピッケルで足場を切りながら進むのだが、土屋くんにとって、切り立った断崖の下の、谷底が見えないことが、かなりの重圧であるらしかった。それはそうだ。なにせ、初めての体験なのだ。でも、逃げることはない。恐いときは誰にだってあるのだ。土屋くんは、恐怖のあまりか、四つん這いになることもあるが、そのたびに僕は、「死んだら会えないよ」と繰り返した。それ以外、なまじのアドバイスはいらない。靴にはアイゼン(鉄爪)を装着してあるから、氷雪に覆われた場所は滑る心配がない。逆に岩場ではアイゼンが効かないが、そんな所では自分で注意を払うものだ。お互い死にたくないから。 八合目を過ぎると、傾斜が緩やかになってきたが、その分、雪も深くなった。僕は持参したカンジキを着け、土屋くんのためにラッセル(雪かきして道を作る)を続けた。恥をさらすようだが、登頂してカンジキの片方が無いことに気づいた。知らないまま歩き続けていたのである。「帰りに回収すれば」と気楽に構えていたが、同じ踏み跡を正確に辿ったつもりなのに、脱落したカンジキは遂に見つからなかった。 登頂。風雪荒れる厳冬の国ざかい。朝にもまして深いガス。だが、気分は最高だ。とうとうやったのだ。二人して金峰山の頂にたどり着いたのだ。しかも、視界ゼロの悪天候が一層雰囲気を盛り上げてくれる。だが、長いは無用。記念撮影をすませ、僕ら二人は、朝来た道を意気揚々と引き上げた。 |
|||||||||



