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| 安間 繁樹 | ||||||||
| 21話 たった1度の冬山登山(その7)。山よさよなら峠を越えて。 | ||||||||
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下山の日、二人は金峰山に向かって一礼した後、未明に出発した。今日は20キロメートルを超える行程なのだ。分かっているのか、黒イヌはただ見つめているだけで、ついてくることはなかった。 どんよりと雪雲が広がっている。金山平まで一気に下り、そこから、初日に来た増富鉱泉への道を背に、信州峠へと方向をとる。雪が少なければ車も通う林道である。食料は確かに少なくなっているが、装備が多いから、ザックもあまり軽くなっていない。雪にとられて、なかなか進めないのだが、「死んだら会えないよ」という言葉にも笑いがこぼれる。この道を行けば、やがては町に出ることができるのだ。 今日はひたすら前進するのみであるが、峠を越えたあたりから、チラッ、チラッと女の子の話が出る。土屋くんも独身だし、誰にはばかる必要もないのだ。だから、僕も一肌ぬいだつもりなのだが、繰り返し聞いてみると、そんな浮いた話ではないようだ。列車の中で、たまたま会った人の名前が「土屋」。沖縄には自分しかいない姓だから、土屋姓が何軒もあるという彼女の郷里に関心を持ったようだ。あるいは、「自分のルーツも、もしかして」などといった考えも浮かんだのだろう。道のりは長い。夏場は牧場にでも使われているのだろうか。雪原が広がり、まっすぐな道がどこまでも続く。 午後4時過ぎ、小海線の信濃川上に着く。今回の冬山もおおかた無事に終わりそうだ。電話をしているうちに、すっかり日が暮れ、駅前の人影もまばらだ。土屋くんと僕は食堂にかけ込み、まずはうどんを一杯、あとはひたすら熱燗をあおぐ。 やがて、汽車がくるだろう。小諸へ着いたら、娘さんが待っていてくれるはずだ。 |
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