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安間 繁樹
6話 大学卒業・単位もらいに教授もうで
 卒業試験が終わった直後、土屋君が、「どうも地学の点数が取れなかったような気がしてならない」と言い出した。たった1科目で留年するのもつらいから、教授に会って卒業させてもらえるようにしたいようだ。「理系科目だから、やすま一緒に行ってくれないか」ということになったが、土屋君はどうやって住所を調べ、コンタクトしたのだろうか。当日は2月の寒い日で、船橋から私鉄に乗り換え、さらに駅からは雪降る中を1キロ近く歩いた。
「寒かっただろう」と言って、教授はラーメンの出前を取ってくれた。土屋君はなかなか話し出さなかった。いや、それが手だったのかもしれない。教授は僕がよく西表島へ行っていることを知って、自分はサンゴモに大変興味を持っていると話し始めた。サンゴ礁の海の浅瀬に自生する海草なのだが、体に石灰分を付着させ、死んでも海草の形がそのまま残る種類なのである。僕は石垣島や西表島で普通に見ていたから、「次の機会には採集してみますよ」と空約束したが、僕が、それを持って、再び教授宅を訪ねる機会はなかった。 
いよいよ、その時が来た。と言っても、おおかた雰囲気は出来上がっており、恐れるものも無かったように思うが、土屋君が教授に呼ばれ隣室に移った。しかし、2人の話は筒抜けである。「遊びに来るのは歓迎だが、こんな頼みで2度と来るな」なんて説教されていた。確かに2度と頼むことはないだろうし、教授宅を訪ねることもないかも知れない。成績はかろうじて合格点だったようで、成績表を開いて説明する教授の声が聞こえていた。
訪問早々にお嬢さんを紹介され、彼女のピアノ演奏を聴いたり、いろんな話をしたように思うが、所詮、良家のお嬢さんである。向こうからは見れば、僕たちは出来の悪い学生で、「たまに、こんなのが来るんだなあ」くらいにしか写らなかったのだろう。その日はどこかの赤提灯だった。